目が覚めてから首に痛みを感じる、首の周りがこわばって首が動かない……。その症状は、いわゆる「寝違え」かもしれません。
今回の記事では、寝違えたときに自分でできる対処法や、寝違えが治るまでの日数をご説明します。あわせてNGな対処法も紹介していますので、寝違えてつらい思いをしている方はぜひご覧ください。
1.寝違えとは
寝違えとは、起床したときに首の周りに痛みを感じている状態のことです。「寝違え」は医学用語ではなく、首周りの筋肉や腱、靭帯の炎症の総称として使われています。そのため、一口に寝違えと言っても、症状や原因はさまざまです。多くの場合にはその中で、首のコリや筋肉痛が寝違えと呼ばれています。
寝違えたときには、痛みによって首が動かせなくなることも珍しくありません。しかし、実際の症状は軽度である場合がほとんど。短ければ数時間、どれだけ長くても2週間程度で痛みが治まります。逆に言えば、もし痛みが長引くようであれば他の病気を疑ったほうがよいでしょう。
2.寝違えの原因
寝違えは眠っている間の姿勢だけでなく、前日の行動が原因で引き起こされることもある症状です。以下では、寝違えの原因になると考えられる行動をいくつかご紹介します。
不自然な姿勢で眠っていた
寝違えの原因としてもっとも代表的なのが、睡眠中の姿勢です。眠っているときに不自然な姿勢をとりつづけていると、首周りの筋肉へ血が流れづらくなったり、腱や靭帯を痛めてしまったりします。その結果として、痛みが生じるのです。
不自然な姿勢の原因には、枕やマットレスが身体に合っていないことが挙げられます。頻繁に寝違えが起こる場合は、一度使っている寝具を見直してみてください。
普段しない運動や労働をした
仕事やスポーツで筋肉を使うことも、寝違えてしまう原因のひとつです。特に、普段は運動をしない人が急に身体を動かすと、寝違えが起こりやすくなります。
多く見られる症状は、首周りの筋肉が疲労によって痙攣してしまう「こむらがえり」です。その他にも、汗をかいたことでミネラルが不足し、血流が悪くなって筋肉が炎症を起こすパターンもあります。
身体を動かすときにはしっかりと準備運動をして、寝る前にミネラルの補給やストレッチを行うとよいでしょう。
同じ姿勢をし続けていた
睡眠中と同じく、起きている間に同じ姿勢をし続けていたときにも、寝違えは起こりやすくなります。座った状態でパソコンの画面を眺め続けるなど、長時間のデスクワークが代表的な例です。
同じ姿勢が長時間続く際には、ときどき簡単なストレッチをして身体をほぐしてあげるとよいでしょう。時間がとれないときには背伸びをしたり、座ったまま肩や首を動かしたりするだけでも症状が緩和されます。
頚椎椎間板ヘルニアや関節リウマチなどの病気
こちらは寝違えの原因というよりも、痛みの原因が寝違えではなく、なんらかの病気だったというケースです。痛みを感じたのが起床直後だったとしても、実際には睡眠中よりも前に症状が出始めていた可能性が考えられます。
具体的な病名として挙げられるのは、頚椎椎間板ヘルニアや関節リウマチです。どちらの病気でも強い痛みが出るほか、放置すると歩行障害などの重大な症状につながる恐れがあります。寝違えがいつまでも直らない場合には、一度医療機関で診察を受けてください。
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3.寝違えた時の対処法
寝違えは痛みに加えて身体が自由に動かせないことも多く、できるかぎりはやく治したいと思うものです。そこで以下では、寝違えたときにできる対処法をご紹介します。
痛みの出る姿勢をしない
寝違えたときに大切なのは、炎症を起こしている箇所に負担をかけないことです。もう少し噛み砕いて言えば、痛みの出る姿勢をしないことが重要になります。
前述したとおり寝違えのほとんどは軽症のため、安静にしていれば自然と治っていくものです。そのため、症状を悪化させないことが、寝違えを治す近道になります。寝違えたときは首や肩を無理やり動かそうとせずに、楽な姿勢を心がけましょう。
湿布を貼る
痛む箇所に湿布を貼るのも、寝違えたときの対処法のひとつです。湿布は処方・市販のどちらでも、ほとんどの場合に抗炎症成分や鎮痛成分を含んでおり、寝違えの症状を緩和する効果があります。
ひとつ注意しておきたいのは、寝違えて間もないころは「冷湿布」を、痛みがある程度治まってからは「温湿布」を使うのが望ましいという点です。
なお、外出の予定などがあって湿布が貼れない場合には、湿布と同様の成分を含んだ塗り薬もおすすめです。
鎮痛消炎薬を服用する
湿布と同様に、「ロキソニン」などの鎮痛消炎薬を服用するのも効果的です。鎮痛・消炎作用がある種類であれば、ドラックストアなどで市販されているもので問題ありません。寝違えによる炎症を鎮めると同時に、痛みを抑える効果が期待できます。
服用の際には医師や薬剤師から説明を受け、用法・用量をしっかりと確認しましょう。多くの鎮痛消炎薬は一般的に、空腹時を避けたうえで、痛みを感じてからできるだけ早く服用するのがよいとされています。
4.寝違えた時にやってはいけないこと
ここまでご紹介してきた対処法とは逆に、かえって寝違えの症状を悪化させてしまう行動もあります。寝違えを長引かせないためにも、NG行動やその理由を押さえておきましょう。
ストレッチやマッサージをする
まずご紹介するNG行動は、ストレッチやマッサージによって身体をほぐすことです。直感的には効果的な方法にも思えるため、「マッサージしてはだめなの?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
たしかに、厳密に言えばストレッチやマッサージのすべてがNGというわけではありません。しかし、痛みがある状態で無理に身体をほぐそうとすると、痛みがより強くなってしまうケースも考えられます。そのため、ひとまず痛みが治まるまでの間は、安静を第一にすることをおすすめします。
長時間冷やす
氷や保冷剤を使い、痛みのある箇所を長時間冷やすのもNGです。冷やすことで痛みを感じづらくなる反面、筋肉への血流が悪くなり、寝違えが治るまでに余計な時間がかかってしまいます。
なお、NGなのはあくまで患部を“長時間”冷やしつづけることです。痛みがひどかったり、寝違えたばかりで患部が熱を持っていたりする場合には、むしろ冷やすのが効果的な可能性もあります。
患部を温める
最後にご紹介するNG行動は、患部を温めることです。痛みがあるうちに患部を温めてしまうと、炎症を悪化させてしまう恐れがあります。コリを感じるなど、血流を良くする目的で患部を温める場合には、痛みが治まってからにするのが無難です。
寝違えたときに冷やすか・温めるかの基準は、「痛みを感じたらまずは冷やす」「痛みが治まったら温める」と覚えておきましょう。
5.まとめ
寝違えてしまったときには、なによりも症状を悪化させないことが重要です。無理に首や肩を動かそうとせず、楽な姿勢を心がけましょう。痛みを抑えるために、湿布や鎮痛消炎薬を使うのもおすすめです。
記事の中でもご説明したとおり、寝違えの原因はさまざまです。その中には、頚椎椎間板ヘルニアや関節リウマチといった病気も含まれています。「ただの寝違えだから」と長期間そのままにしておくと、重大な症状につながってしまうかもしれません。
何週間にもわたって寝違えたような症状が続く場合には、できるかぎり早い段階で整形外科を受診することをおすすめします。